熊本県保口岳(1281m)

九州百名山地図帳(山と渓谷社)No52




2017年1月4日  山深い(ヤブ深い)山でありながらどこか人の営みが感じられる脊梁の山

保口岳山頂から国見岳(中央左)と烏帽子 岳(右端)を望む。すじ雲が美しかった。
 


  隣の大金峰、小金峰を 歩いていると、西側に谷を挟んで大きな山体が広がっている。保口岳である。2011年発行の「地図帳九州百名山」に登場した山である。
国土地理院の地図には登山道の表記がないことから、登山道も不明瞭ではないかと推測される。案内書やネットのレポートなどから「ヤブコギの山」を覚悟して 臨むことになる。
登山口にあたる保口集落は、地図で見る限り10数戸の家屋が記載されているが、実際にはほとんど人家はなく1,2軒が残るだけのようだ。
標高850mの山間部での生活の厳しさは想像に難くない。登山道とはいえどことなく生活のにおいが感じられる。ガラス瓶の破片や鍋などが落ちているし茶畑 も残っている。
一方、山頂まじかまで人工林は広がっており、土砂崩落を起こした谷筋はていねいにコンクリートで修復されており現在も人の手が入っている。
帰りは林道を通って旧泉村役場の方向へと下ったが、ほとんど車の通らない林道は狭いものの全線舗装である。
 九州山地の深い山の中で、山と人との関わりを考える山行きとなった。
 
保口登山口駐車場9:35― 一 軒家10:00ー作業道 との出会い10:25-尾根道への登り口10:45 ―普賢峰11:20 ― 保口 山山頂11:45 12:15―(作業道保口線)- 作業道出合13:10―登山口駐車場13:40 (全行程6.0km)


保口の集落(現在住人が生活しているかどう かは不明)を通る道路の終点が駐車場。 駐車場に登山口の表示があり、杉林の中を 登っていく。登山道脇には人家の跡が数か所残っている。

登山道沿いに残る一軒家の脇を過ぎると、林 の中に納屋(廃屋?)が建っている。
ほどなく深いスズ原に入り込む。これが保口 岳名物のスズダケ藪らしい。幅は狭いもののきちんと刈られており、迷うようなことはない。
突然杉林の中に茶畑が現れる。まとまった広 さがあり、ここでの生活を支えていたことがうかがえる。
茶畑を過ぎ最初の作業道に出る。この作業道 を2回折り返したところから左側に杉林の中を登り、「作業道保口線」に出る。
「作業道保口線」に出てきた所。ここでは西 側の展望が開ける。帰りにこの作業道を下ってくる予定である。 作業道から尾根道に入る。人工林やスズ原が 繰り返し現れる。 藪の中から 頭上に岩壁が現れる。普賢峰の岩壁である。何の変哲もないこの山では唯一山らしい所かもしれない。
普賢峰に登る崖にはロープが張られている。 距離こそ短いがこの壁はかなりな急斜面である。 普賢峰山頂には仏像が祀られている。ここは 南側に眺望が開ける。保口岳の山頂よりも山頂らしい雰囲気だ。
目指す保口岳の山頂が北側に見える。保口岳 への最後の登りのヤブが、このルートでは一番深かった。
保口岳山頂にて。山頂付近に は石灰岩が露出 しており、独特な風景である。北側斜面から人工林が迫ってきているが、かろうじて頂上だけは樹木もなく暖かい日差しと眺望が得られる。 南側には上福根山が大きく見 え、山犬切や岩 宇土山などが脇を固める。ここから左側へ白鳥山、烏帽子岳、国見山、京丈山と脊梁の山々が連なっている。
帰りの「作業道保口線」から 見た普賢峰の ピーク。この作業道沿いは落葉樹も多く、時期を変えて訪れてみたいところだ。