向坂山(宮崎県1685m) 白岩山(宮崎県  1620m)

(九州百名山(地図帳: 山と渓谷社) No72)
(西日 本新聞社の「花をめぐる九州の山歩き」ではP124に掲載)


五ヶ瀬ハイランドスキー場の後方に広がる向坂山


①  2017年7月3日 初夏の野草を訪ねて白岩、向坂山へ
  白岩は石灰岩の岩峰で、付近は「白岩山石灰岩峰植物群落地」として天然記念物に指定されており、九州では花の名所として知られている。
2005年にはシカ対策の防護柵が整備されているので植生の回復を期待して、20数年ぶりに白岩と向坂山を回ってみた。
 向坂山から白岩に至る尾根道は、古くは「霧立越」と呼ばれた道である。平家の落人や、西郷隆盛が西南戦争に敗れ人吉へと敗走する際に通ったルートであ る。
「霧立越」については、地元の「kiritachi.net」のサイトに詳しく解説紹介されている。とても参考になった。
国道からスキー場への登り口には「霧立越登山口」と書かれた大きなゲートがかけてあり、また、白石峠に設置してある登山届ボックスには「霧立越関所」と書 かれている。
地元でもこの「霧立越」の名称をアピールしているようである。

 白岩は、1620mの岩峰である。今はこの岩峰に「白岩山」の標識があり、登山案内書でも1620m岩峰がそれだとされている。
しかしながら国土地理院の地図では1620m岩峰ではなく、もう少し南にある1647mのピークに「白岩山」と書かれている。
案内書などではこの1647mピークは「水呑ノ頭」と表示されており、実に紛らわしい。
多分、「1620m白岩 1647m白岩山」ではなく「1620m白岩山 1647m水呑ノ頭」で統一されていくのだろうが、この岩峰は「白岩山」と呼ぶ だけの風格は感じられないのだが・・・


スキー 場駐車場(カシバル峠)10:00-ゴボウ畠(白岩登山口)10: 20-白岩峠(杉越)10:50-白岩11:25 12:20
-白岩峠(杉越)12:40-向坂山頂13:15 13:30-スキー場13:45-ゴボウ畠14:10-駐車場14:30(全行程8.5km)




ス キー場駐車場に駐車して林道を歩いてゴボウ畠(登山口)へ。車で登ることも可能だが林道沿いの自然林は歩いても気持ちがよい。
登 山路はウッドチップや小石等で整地されており歩きやすい。樹木名のプレートも点々とあるが、残念ながら読み取れないものも多い。
ほ どなくして白岩峠に着く。この日、平地では34度が予想されているが、ここの寒暖計は19度を指している。風が心地よい。


峠 からは霧立越の道が緩やかな傾斜で延びている。ブナの倒木にはキノコも生えている。いかにも食えそうだが・・・・?
白 岩一帯を保護するネット設置の趣旨等を書いた看板が道路わきに立っている。その先には・・・

金 属製の防護ネットと内側には合成樹脂製のネットが張られている。シカやイノシシから植物を守ると同時に、ニホンカモシカなどの希少生物がネットにかかって 亡くならないことを願いたい。


ネッ トに保護された一角は、地面までが緑に覆われており、改めてシカ等の被害の大きさに驚かされる。
山 頂付近は小さいながらもお花畑である。満開の花もあるが蕾のものも多い。写真はキリンソウ。
白 岩からは正面に脊梁の山々(中央左が国見岳、中央右に高岳と三方山)が見渡せる。


白 岩から引き返し、峠からゆるい坂をだらだらと登ると向坂山の山頂に着く。
山 頂には、大きなナナカマドの木が数本ある。秋の紅葉時期もよさそうだ。
山 頂からスキー場へと下る。後方のガスがかかっている山は小川岳。このスキー場、入場者数の減少で来年営業するのかは分からない。


白岩付 近の花々






シモツケソウ

ヤ マアジサイ
コ ウスユキソウ ではなくヤハズハハコグサ


イ ワキンバイ

キ ヌタソウ?
ヤ マボウシ


バ ケイソウ

コ ナスビ(峠から白岩の間の道端に)
オ オヤマレンゲ(向坂山頂からゲレンデの間に)


シ コクシモツケソウ

ウ ツボグサ












② 2017年8 月2日 下界の暑さ(38℃)を逃れて白岩へ(キレンゲ ショウマと面会)
 前回から1か月ほどたった8月、台風5号の影響もありここ数日、熊本県は38℃近い全国最高温度である。今回は妻と2人で花を見 に出かけてみた。
ルートは前回7月とは逆に、登山口から五ヶ瀬川源流近くの谷に下り、向坂山、白岩へとたどってみた。写真タイムが多く時間はゆったりぎみである。

ゴボウ畠(白岩登山口)10:10-スキー場11:00―向坂山頂11:15 11:30―白岩峠(杉越)11:45

-白岩 12:20(昼食) 13:00-白岩峠(杉越)13:15-ゴボウ畠13:30(全行程6.0km)
     
       白岩付近の花々



登 山口からほどなくして谷筋に入ると、保護柵の中にキレンゲショウマの群生が広がる。
キ レンゲショウマの花。大半はまだ蕾であったが、数輪だけ開花。
谷 筋にはシシウド(?)の花も。


谷 筋から登山道に戻る。登山道沿いに散らばるシカのシカバネ。ネットに絡まったか?
ホ トトギス。ゲレンデから向坂山頂への間や白岩付近など方々に咲いていた。

白 岩の保護柵の中へ入るとオオルリソウの群落がある。るり色の小さな花が、やっと数輪咲いていた。


ウ バユリ。木陰の薄暗い場所に咲いている。花の時期には葉(歯)が枯れ始めることから名づけられたとか。
チョ ウのアサギマダラ、遠距離移動することで有名。このチョウはイケマ(登山道沿いにたくさん繁茂)の葉を食べるとか。
ツ クシノタケ。シシウド族に属する。葉柄の付け根が袋状になっている。漢字では「筑紫野竹」か


キ ヌタソウ。花は十文字。葉は4枚の輪生で3本筋あり。実の付き方が砧(きぬた)の形だとか。
シ コクママコナ。下方の花弁に2つの白いふくらみがあり米粒状であることからママコ+ナだとか?
ホ ソバシュロソウ? 不思議な色の花だ。


ヤハズハハコ。葉に毛が生えており、前回コウスユキソウと間違えてしまった。
ホタルサイコ。花が放射状に広がり蛍の光を連想させるとか。葉は無 柄で基部が広がり茎を抱く。
キ リンソウ。1輪だけ残っていた。


オ ニユリ。山頂周りのあちこちに咲いている。
ウ ツボグサ。
カラマツソウ。花のおしべが房状に着き落葉松の葉の付き方に似ているとか・・・


コ ウスユキソウ。エーデルワイスの仲間で、九州では珍しいらしい。山頂南面で初対面。
ソ バナ。山頂周りに群生しているが、時期が早かったらしく、開いていたのはこの1本だけだった。
??? 山頂東面にあった花。花の付き方はホソバシュロソウに似ているが色が・・・






③ 2018年8 月4日 猛暑を避けて今年も向坂山、白岩へ
 今年はとにかく暑い。特に近畿、東海、関東など東の方で最高気温の更新が続いている。
「夏山の暑さはどうも苦手」という友人に、「この山なら標高も高く、樹木に覆われている ので猛暑でも大丈夫」と説得し、3人で出かけてみた。
土曜日とあって、スキー場駐車場やゴボウ畠駐車場には10数台の車が止まっている。また、林道途中ではグループを乗せたマイクロバスが追い越して行った。
「静かな脊梁」のイメージもこの山では通用しなくなってきたということか・・・

スキー場駐車場9:15―ゴボウ畠(白岩登山口)9:40-キレンゲショウマ自生地9:45― スキー場10:35―向坂山頂11:00 11:15―白岩峠(杉越)11:30
-白岩12:00(昼食) 12:50-白岩峠(杉越)13:10-ゴボウ畠13:25―スキー場駐車場13:45(全行程7. 5km)
     


ゴボウ畠(白岩登 山口)のすぐ先から谷筋に下ると、今年もキレンゲショウマの花が咲いていた。今年は猛暑のせいか昨年よりも早そうだ。
一面花が着いてい るものの蕾や開きかけのものが大半で、花先が開いているのは少ない。岩と渓流に足を取られながら近づいて撮影。
谷筋への道端にヤ マホトトギスの花が残っていた。


谷筋にはゴボウら しき株(フキにも似ている)も多い。ここの地名「ゴボウ畠」はこの植物由来であろうと勝手に解釈した。
谷筋から林道へ登 り、ゲレンデを経由して向坂山へと向かう。アサギマダラの姿があちこちで見られた。途中であった人は「ここまでで30数匹見た」と驚かれていた。


向坂山山頂にて。


山頂から白岩峠へ と稜線を下る。
峠の温度計は 24℃を指していた。平地より10℃以上低いことになる。
登山道わきにはス ギゴケが美しい。


スギゴケの中から 顔を出したキノコ。いかにも食えそうだが・・・
枯れたブナの樹に はびっしりとキノコが付いている。ブナの樹だから「ブナシメジ」といいたいがどう見ても違うようだ。

白岩の保護区域に 入ると一気に花が増えてくる。最初に出会ったのはツクシノダケ。袋状の部分から枝が出てきており不思議な格好をしている。


ソバナではなかろうか。薄い青から白色まで色の変化が楽しめる。昨年は1株だけしか咲いていなかったが今年は多 かった。

ヤ マシャクヤクの実。清楚な感じの花からは想像できないどぎつい実である。
シコクママコナの 花。米粒がピンボケで「おかゆ」状態になってしまった


ホツツジの花。白 岩山頂付近にあった。
カラマツソウ?
白岩山頂にて。頂上直下で10数人のグループとすれ違ったため、山頂では静かに食事することができた。



山頂の岩かげのヤ ハズハハコ
岩の隙間のキリン ソウ。この時期には実を付けていた。