熊 本県国見岳(1739m) 五勇山(1662m)
九州百名山地図帳(山と渓谷社)No50


2017 年3月17日 熊本・宮崎県境の脊梁山地(国見岳、五勇山、烏帽子岳)を縦走する
 
  九州の脊梁山地で一番高い国見岳へは熊本県側の内大臣林道を利用するのが一般的だったが、林道が崩落し通行止めになって久しい。
修復と崩落のいたちごっこの状態だと思われる。仕方ないので今回は、五家荘から登って見ることにした。熊本から国道(酷道)445号線で二本杉峠を越え、
樅木の集落から10kmほど林道を走った五勇橋から尾根を登り、国見岳、五勇山、烏帽子岳へと周回するコースを歩いてみることにした。

 
国見岳山頂からは、春霞の中にも関わらず脊 梁の代表的な山々が見渡せた。  

国見岳山頂から東方向


北東方向


北西方向


西方向


南西方向


南方向 




 国見岳までの登り2時 間30分、烏帽子岳までの尾根歩きに2時間30分、烏帽子岳からの下りに1時間30分、合計6時間30分とみて出発したが、
思いのほか雪が残っており、登りで予想以上の時間を要することとなった。その結果、国見岳から先ではペースを上げ、ほとんど歩きっぱなしで下山することに なった。
最後の下り坂では雪の上をスキー感覚で滑りながら下るという裏技も出しながら、まさに転げるようにして下ってきた。

五勇橋手前の烏帽子登山口9:15―国見岳登山口9:25ー新道との合流点10:05-国見岳 山頂12:00(昼食)12:30
 ―五勇山13:40―烏帽子岳14:50 15:00-登山口16:05 (全行程13.0km)


樅木からの林道は狭いながらも走りやすい。五勇橋直前にゲートが現れ た。車はこの手前100m程の「烏帽子岳登山口」付近に駐車できる。 ゲートを越え橋を渡るとすぐに「(旧)国見岳登山口」である。案内板の 下に『登らないでください。キケン! 新道利用を』と書いてある。このことを了解してここから登ってみると・・・
杉林の中を、ほぼ真っ直ぐに踏み跡が続く。石を落とすか自分が落ちるか といった感じである。確かに、登りはどうにかなるが下りは御免こうむりたい。
尾根に出てしばらくすると新道と合流する。旧道側にはロープが張ってあ り、入らないように杭まで打ってある。下り口にはロープが張ってあるが、登り口にはなかったことに妙に納得する。
尾根筋で出会った「ヒメシャラ八兄弟」。
しかしながら古木も含めて立っているのは7本しかない。付近を探してみるとヒメシャラらしき倒木が1本あり合点がいった。ヒメシャラは「男」というイメー ジではないけれど・・・?
尾根筋には雪が残っており美しいが歩きにくい。
ここでもシカの家族(3頭)と出くわす(中央上部に1頭)。尾根筋のスズタケはシカに食べられ葉っぱがなくなっており、このままでは枯れてしまうだろう。
尾根の北側は雪の吹き溜まりとなっており、傾斜地では足先に力が入る。 アイゼンは持参しているが高下駄状態になりそうな雪なので使用しなかった。
山頂からは360度の大パノラマである。山頂には祠が建っているが、 30年前に登った時よりもきれいになったように思う。脊梁の山々を眺めながら昼食をとる。 山頂から南をみると、正面の小国見のピークを越え、裏の五勇山を経て右 奥の烏帽子岳へと向かい、右手に尾根を下るコースを歩く予定。途中からは下山できないので覚悟を決めて出発する。
五勇山に至る緩やかな稜線沿いにはシカの糞が至る所に散乱している。糞 の量はすさまじい。下草やスズタケが枯渇するはずだ。 鹿と目が合う。人間を警戒して甲高い鳴き声を発し、じっと監視している。繁殖しす ぎて自然体系が壊れていくことは理解しつつも、目を見ると文句なしにかわいい~!
小国見のピークを越え五勇山の分岐に着く。椎葉の「萱野登山ルート」と 合流する。五勇山の三角点はどこにあるのか分からなかったが、時間節約のためカット!!
五勇山から烏帽子岳へのルートは、近そうに見えるが雪道のアップダウン が続き結構時間がかかる。一帯はシャクナゲの大群落だが蕾は少ない。今年は裏年なのかな? 似た景色が繰り返され少々うんざりしだしたころに「椎葉越」からのルー トが合流し、ほどなく烏帽子岳の山頂に着く。午後3時近くになっておりそそくさと下り始める。 自然林の中の緩やかなくだりに始まり、後半は植林地帯の中をテープを頼 りに一気に下っていく。テープを見失うと、どこがルートか全くわからなくなるので注意が必要だ。


 脊梁では馬見原から小川岳、向坂山、扇山を経て椎葉に至る「霧立越」に対して、今回歩いた国見岳から五勇山、烏帽子岳へ至る道は「向霧立越」と呼ばれて いる。
2本の道が南北に並行して走っていたらしい。今回このコースを歩いてみると、確かに階段やロープなどはなく、緩斜面が続く歩きやすい道である。
とはいえ1500mを越える尾根道を歩くのは、気候条件次第ではさぞかし難儀であっただろうと推測される。先人たちはワラジ履きで大したものだと感心させ られる。

 このコースは周回できるところがとても良い。また、シャクナゲの大群落が方々にあり、花の時期には見ごたえがありそうである。ブナの巨木も心を癒してく れる。
稜線歩きは高低差が少なく安全である。九州の中央に位置し見通しが良ければほぼ全域の山が望めそうである。多くの魅力をもつ山である。再度訪れたい山だっ た。